『オデッセイ』は情緒よりも論理でエンターテインメントを成立させた快作
映画『オデッセイ 』予告編
The Martian | Official Trailer (←こっちが最高)
※『グッド・ウィル・ハンティング』のネタバレがありますのでご注意を。
この映画が画期的だったのは、"情緒"ばかりに流されることなく、"論理"によってエンターテインメントを成立させてしまったところではないでしょうか。
具体的には宇宙飛行士と地球で待つ家族が「愛してる」と甘い言葉をかけあったりするシーンが情緒ですが、そんなのは少なくとも火星で生きるためには意味ないよね、という潔さが非常に痛快な作品でした。
『ブリッジ・オブ・スパイ』の名言を借りるなら、まさに「Would it help?(それが何かの役に立つのか)」ということ。
主人公のマーク・ワトニー(マット・デイモン)はそのかわり"論理"に従って、生きるために必要なことを着々とこなしていきます。
論理というのはつまり「知性」「科学」。情緒で人は進化できないけれど、論理は人を未来へと連れて行ってくれるという、非常に夢のある映画でした。
『グッド・ウィル・ハンティング』ではシンクタンクへの就職を蹴って、愛する女性の元へと旅立って行くという極めて"情緒"的な道を選んでいたマット・デイモンが主役なのも面白い。
論理ばかりで堅くて冷たい話なのかというと、まったくそんなことはありません。
脚本(と原作)のユーモアが抜群なのはもちろん、音楽の使い方も絶妙で、ドナ・サマーの"Hot Stuff"が流れる場面は笑えて仕方ないし、デヴィッド・ボウイの"Starman"とオージェイズの"Love Train"が流れるところは涙なくして観られません。
「世界中のみんな、さあ互いに手を取り合って行こうよ。愛の列車に乗って」というのは照れ臭く感じるけれど、その通りとしか言いようのない正しさがあるので、やっぱり感動せざるを得ませんよね。
The Martian (2015): Soundtrack and Complete List of Songs (←視聴できます)
デヴィッド・ボウイ×宇宙といえば、最近OK GOの無重力MVのおかげで、カナダの宇宙飛行士が宇宙で撮った"Space Oddity"の自作MVが再注目されてます。
孤独を感じさせる雰囲気はどこか『オデッセイ』に似ているような気も。
先日、アメリカの研究施設で世界で初めて「重力波」が観測されましたが、これもまさに論理がもたらした感動ですね。
世界のみんな、手を取り合って、さあ未来へ!
『オデッセイ』 2015年・142分
原題:The Martian
監督:リドリー・スコット
脚本:ドリュー・ゴダード
原作:アンディ・ウィアー『火星の人』
製作:サイモン・キンバーグ、リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、アディティア・スード、マーク・ハッファム
撮影:ダリウス・ウォルスキー、ASC
編集:ピエトロ・スカリア、ACE
出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・ペーニャ、ショーン・ビーン、ケイト・マーラ、キウェテル・イジョフォー