『アオハライド』ストーリーよりも"キュン死にポイント"を重視したキラキュン青春ラブストーリー
『アオハライド』(2014/日本/122分)
監督:三木孝浩
原作:咲坂伊緒(集英社「別冊マーガレット」連載)
脚本:吉田智子
主題歌:いきものがかり「キラリ」
製作:東宝映画
配給:東宝
出演:本田翼、東出昌大、新川優愛、藤本泉、千葉雄大、高畑充希
「キュン死に映画」という新ジャンル
『L♡DK』『近キョリ恋愛』『好きって言いなよ。』『クローバー』(すべて2014年公開)
昨今、邦画界に跋扈する"キュン死に映画"というジャンル(勝手に言ってます)に共通するのは、高圧的な男性と女性のツンデレ的恋愛が描かれているという点。
その系譜に新たに加わったのが『アオハライド』。
ちなみに、アオハライドというのは青春(あおはる)にライド(乗る)の造語とのこと。
中1の頃に両想いだったにも関わらず、互いに想いを告げられないまま離ればなれになった双葉(本田翼)と洸(東出昌大)が高2の春に再会。しかし、洸はある過去に縛られて別人のようになってしまっていた…という話。
※以下、ネタバレあり
早々にネタバレしてしまうが、この洸の"ある過去"というのは、女手ひとつで育ててくれていた母親を病気で失ってしまったというもの。
献身的にお見舞いにも行っていた洸だが、母親を幸せにしてやれなかったと責任を感じ、以来、自分は幸せになってはいけない人間だと殻に閉じこもるようになっているらしい。
(ちなみに、洸の兄も同じ高校の教師として登場するが、弟がこんなにも思い病んでいるのに対し、兄は人ごとのようにけろっとしていて相当ヤバい)
そして、物語は洸を過去から解放してあげるべく、双葉はじめ友達たちが立ち上がる展開になっていく。
大事なのはストーリーよりも"キュン死にポイント"
映画を観ていると、ところどころに"キュン死にポイント"が散りばめられているのに気づく。例えば、泣いているところをギュッと抱き寄せられたり、振り向きざまにキスされたり。たとえそれがいかに無理があるシチュエーションだとしても、当然のようにキュン死にポイントは展開される。
これはさっき挙げた何本かの映画すべてに共通しているのだが、どれも原作が少女漫画ということが影響しているのだろう。
少女漫画というのは各エピソードごとにキュンとくる何か(=見せ場)を入れ込まないといけないわけだから、それ故にストーリー的に無理が生じることは避けられない場合がある。
むしろ、ストーリーよりも大事なのは、いかに斬新で新鮮なキュン死にポイントを発明できるかというところだ。『近キョリ恋愛』では教卓の下でキスするっていう超現実的で画期的なシーンがあるが、これもどうキュンキュンさせるかが先行して生まれた場面としか思えない。
すべてはキュン死にするために!
で、そういった原作を映画化しているわけなので、この手の作品をストーリー的にどうこう言っても仕方ない気がしてくる。
この映画は"キラキュン青春ラブストーリー"と銘打っているとのことだが、これを観に来る人たちにしてみれば、キラキラしてキュンキュンしたシーンがあればあるだけ嬉しいに決まっている。
僕だってドッカンドッカン爆発が起こったら楽しいし、無駄だろうが美人な女優さんがガンガン脱いでるほうが嬉しい。
青春といえば「青空」「モノローグ」「走る少女」みたいなイメージが様式美になっていることにはウンザリするけれど、本田翼はかわいいし、東出くんはカッコイイし、あらゆる場面でキュン死に映画としての役目は真っ当に果たしていると思う。
だから別に修学旅行先が個人の都合で操作されても、生徒が夜中に抜け出して朝焼けを見るのを先生が許しても、そんなのいちいち指摘するなんて愚行でしかない。
東出くんが高校生に見えないというのも「これはファンタジーですよ」ということを示唆するための作り手の親切心じゃないか!
平凡で地味な現実を忘れ、夢のような美男美女の素敵な恋と友情のファンタジーを愛でるのが、この映画の正しい楽しみ方だ!そう、すべては"キュン死に"するために!
メリークリスマス!